AIツールをAndroid個人開発に取り入れると、企画の整理、仕様書、コード作成、エラー調査、ストア文章まで幅広く支援してもらえます。ただし、すべてを一つの会話で任せると前提が混ざり、もっともらしい誤りにも気づきにくくなります。
GTANSU LABでは、役割を固定するのではなく、工程ごとに「今回の成果物」と「確認方法」を決めてからツールを選んでいます。この記事では、ChatGPT、Claude/Claude Code、GeminiをAndroid個人開発でどう使い分けているかを、実際に使える指示例とともに整理します。

先に結論:ツール名より工程と入力情報を分ける
私の基本形は、ChatGPTでアイデアと仕様のたたき台を作り、Claude Codeのようなコードベースを扱える開発エージェントで実装単位の変更を進め、GeminiではGoogle・Android周辺の調査やAndroid Studio内の支援を使う、という分担です。
ただし、これは性能ランキングではありません。各サービスの機能、料金、利用できるモデルは変わりますし、同じ作業を複数のツールで行える場合もあります。重要なのは「何を作るか」「どの資料を正とするか」「完了をどう検証するか」を最初に指定することです。
1. ChatGPT:企画を広げ、仕様を文章にする
アイデア段階では、いきなりコードを頼まず、利用者、困りごと、使用場面、最小機能を会話で掘り下げます。ChatGPTは複数案の発想、論点の整理、文章の初稿と修正に使いやすいため、曖昧なメモを仕様へ変える最初の相手にしています。
たとえば「運動用タイマーを作りたい」だけでは、既存アプリとの差や必要な画面が決まりません。そこで、次のように質問役を依頼します。
Androidの個人開発を始めます。
目的は「運動中に画面を見ず、音声で残り時間を把握できること」です。
すぐに仕様を書かず、利用場面・困りごと・最小機能を決めるための質問を
1回に1問ずつ、合計10問してください。
回答後に、MVPに入れる機能と後回しにする機能を分けてください。
質問に答えた後は、画面一覧、画面遷移、データ項目、異常時の動作、受け入れ条件へ変換します。実際の流れはChatGPTでAndroidアプリの仕様書を作成した例でも紹介しています。
2. Claude/Claude Code:実装範囲を絞ってコードベースを変更する
仕様が固まったら、機能を小さな作業に分けます。コードを扱うAIには「アプリを全部作って」ではなく、対象ファイル、守る設計、変更してよい範囲、テスト方法、完了条件を渡します。Claude Codeなどの開発エージェントを使う場合も、最初に既存構成を読ませ、変更計画を確認してから一機能ずつ進めます。
既存のAndroidプロジェクトにタイマーの一時停止機能を追加してください。
最初に関連ファイルと現在の状態管理を調査し、変更計画だけを提示してください。
制約:
- Kotlin / Jetpack Compose
- 既存の画面構成と命名を維持
- 新しい外部ライブラリは追加しない
- バックグラウンド復帰後も残り時間が破綻しない
完了条件:
- 開始、一時停止、再開、終了が動く
- 対応する単体テストを追加
- ビルドとテスト結果を報告
一度に変更する範囲を狭くすると、差分を人が読めます。生成コードの採用判断では、既存設計との整合、不要な依存追加、例外処理、ライフサイクル、テストの有効性を確認します。指示の組み立て方はClaude Code向けプロンプトを作った例に詳しくまとめています。
3. Gemini:Google・Androidの文脈で調べ、IDE内で確認する
Android固有のAPIやGoogleサービスを扱う場面では、Gemini in Android Studioのように開発環境へ統合された支援が便利です。Androidの概念説明、KotlinやComposeのコード例、ビルド・同期エラーの説明、クラッシュ情報の読み解きなどを、作業中の文脈で尋ねられます。
ただし、回答をそのまま最新仕様と見なさず、Android Developers、Firebase、Google Play Consoleヘルプなどの一次資料へ戻ります。調査を頼むときは、公式資料のURL、更新日、対象バージョン、確定事項と推測を分けてもらいます。
Androidのバックグラウンド実行制限について調べます。
Android Developersの公式資料を優先し、次の形式で整理してください。
1. 今回のタイマー機能に関係する制約
2. OSバージョンで異なる点
3. 推奨される実装候補と各トレードオフ
4. 確認に使った公式URL
5. 不明点・追加検証が必要な点
古い記事や非公式ブログだけで結論を出さないでください。
ChatGPT・Claudeとの比較を含む調査の進め方は、Geminiで情報収集した記録も参考になります。
工程別の使い分け例
| 工程 | AIに頼むこと | 人が確認すること |
|---|---|---|
| 企画 | 利用場面の質問、競合との差、MVP候補 | 本当に自分が解決したい問題か |
| 仕様 | 画面遷移、データ項目、受け入れ条件 | 矛盾、抜け、実装可能な範囲 |
| 実装 | 小さな差分、テスト、エラー説明 | 差分、設計、セキュリティ、実機動作 |
| 調査 | 論点整理、公式資料の候補、比較表 | 一次資料の本文と更新日 |
| 公開準備 | ストア説明、FAQ、変更履歴の初稿 | 実際の機能・申告内容との一致 |
AIへ渡す情報のテンプレート
ツールを問わず、以下の6項目をそろえると回答を検証しやすくなります。
- 目的:誰のどんな問題を解決するか
- 現在地:既に動く機能と未着手の部分
- 技術条件:Kotlin、Compose、minSdk、採用中の設計など
- 対象範囲:変更してよいファイルや機能
- 禁止事項:依存追加、公開API変更、秘密情報の出力など
- 完了条件:必要なテスト、ビルド、画面確認
さらに、「前提が不足していれば実装前に質問する」「変更理由を説明する」「確認していないことは未確認と書く」を加えます。これだけでも、AIが推測で作業範囲を広げるリスクを減らせます。
失敗しやすかった使い方
長い一文で全部頼む
企画、UI、データベース、広告、公開設定を一度に頼むと、各判断の根拠が薄くなります。成果物を「仕様書」「一画面」「一機能」「テスト」の単位に分けます。
エラー文だけを貼る
エラー全文に加えて、再現手順、直前の変更、関連コード、期待する動作、試したことを渡します。秘密鍵、APIキー、個人情報は貼りません。
生成されたテストが通っただけで完成にする
テスト自体が誤った前提で書かれている可能性があります。要件から期待値を確認し、リリースビルドを実機で操作します。AIの出力は完成品ではなく、レビュー対象の差分として扱います。
安全に使うためのチェック
- APIキー、署名鍵、ユーザー情報、非公開コードを不用意に送らない
- 利用プランと組織のデータ取り扱い設定を確認する
- 追加された依存ライブラリの提供元とライセンスを確認する
- 権限、課金、認証、データ削除は公式資料と実機で再確認する
- コード差分を読み、ビルド・テスト・主要操作を自分で確認する
まとめ
AIツールの使い分けで大切なのは、どれが一番賢いかを決めることではありません。企画では問いを増やす、仕様では曖昧さを減らす、実装では差分を小さくする、調査では一次資料へ戻る、公開前には人が実機で確認する、という役割分担です。
まずは一つの小さな機能で、目的・制約・完了条件をそろえた指示を試してみてください。会話と差分を記録しておくと、自分の開発に合う再利用可能なプロンプトへ育てられます。
公式資料
- OpenAI Academy:ChatGPTでのブレーンストーミング
- OpenAI Academy:ChatGPTを使った文章作成
- Anthropic:Claude Codeの開始方法
- Google for Developers:Android開発とGemini
各サービスの機能や提供条件は変更される場合があります。利用時点の公式情報と契約内容を確認してください。